長期譲渡所得税 短期譲渡所得税 10年超軽減税率の特例
不動産を売却したときに利益が出ると、その売却益に対して譲渡所得税という税金が発生することがあります。
譲渡所得税というのは、所得税(復興特別所得税含む)と住民税を合算して課税されます。不動産の譲渡所得は、他の所得と合計ぜず、分離して所得税を計算する「分離課税」が適用されます。(売却で利益が出たら確定申告が必要です。)
では実際に、1.800万円で所得した不動産を3.000万円で売却して、仲介手数料などが譲渡費用として200万円かかった場合の譲渡所得税と、3.000万円特別控除を利用した場合の譲渡所得税を計算してみます。
【譲渡所得の計算式】
譲渡(売却)価格-(取得費(購入費)+譲渡費用)=譲渡所得
3.000万円-(1.800万円+200万円)=1.000万円
1️⃣ 短期譲渡所得税の計算
2️⃣ 長期譲渡所得税の計算
3️⃣ 10年超軽減税率の特例の計算
4️⃣ 短期譲渡所得で3000万円特別控除の計算
5️⃣ その他の税金控除・特例
課税方法 | 税率(所得税) | 税率(住民税) |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
10年超軽減税率の特例 | 10.21% | 4% |
ただし、短期譲渡所得・長期譲渡所得を問わず、令和19年(2037年)までは復興特別所得税として、毎年の基準所得税額の2.1%が上乗せされます。
※10年超軽減税率の特例は、マイホームで所有期間が10年超の土地や建物に限る。
※10年超軽減税率の特例、譲渡所得6000万円超の部分は所得税15.315%、住民税5%
【所有期間が5年以下の土地や建物の売却】
答え:譲渡所得税合計金額は 396万3.000円
短期譲渡所得の計算式
① 所得税の計算 1.000万円✕30%=300万円
② 復興特別所得税の計算 300万円(所得税額)✕2.1%=6万3.000円
③ 住民税の計算 1.000万円✕9%=90万円
【所有期間が5年超の土地や建物】
答え:譲渡所得税の合計金額は 203万1.500円
長期譲渡所得の計算式
① 所得税の計算 1000万円✕15%=150万円
② 復興特別所得税の計算 300万円(所得税額)✕2.1%=3万1500円
③ 住民税の計算 1000万円✕5%=50万円
【マイホームで所有期間が10年超の土地や建物】
答え:譲渡所得税合計金額は 142万1.000円
①所得税の計算 1000万円✕10.21%=102万1.000円
②住民税の計算 1000万円✕4%=40万円
【所有期間が5年以下のマイホームで、住まなくなって3年以内に売却した土地や建物】
答え:3000万円特別控除適用で譲渡所得合計金額は 396万3.000円-3000万円=0円
①所得税の計算 1.000万円✕30%=300万円
②復興特別所得税の計算 300万円(所得税額)✕2.1%=6万3.000円
③住民税の計算 1.000万円✕9%=90万円
その他の税金控除・特例
【特定の居住用財産の買換え特例】
所有していた住宅を売却し、その売却額が新たに買換た住宅の価格を下回るときに利用できる特例です。この特例の適用を受けた場合、譲渡所得の課税を将来に繰り延べすることができます。住居の買換えにおいては、売却した住居の譲渡益に対する譲渡所得税と新居の購入代金を同時に支払うため、その費用負担が大きくなりがちです。そんな時に特定の居住用財産の買換え特例を利用し、譲渡所得の課税を将来に繰り延べすれば、新居の購入費用が準備しやすくなるというメリットがあります。ただあくまでも課税が一時的に繰り延べられただけであり、免除されるわけではありません。今回の売却時に得た譲渡所得は、次回の売却時に得る譲渡所得と合算され、高額課税の対象となるため、十分な注意が必要です。おもな適用条件としては、売却した家の居住年数が10年以上であること、売却額が1億円以下であること。買い換える新居の建物が50㎡以上、土地が500㎡以下であることなどがあります。
【相続した不動産の場合の取得費加算特例】
相続が開始された日から3年10ヶ月以内に相続不動産を売却した場合、相続税額の一部を取得費に加算することで、譲渡所得税の負担を軽減することができる。
【相続した空き家を売った場合の特例】
空き家(亡くなった方のお住い)を相続した相続人が、耐震リフォーム又は取り壊した後にその家屋又は敷地を譲渡した場合には、その譲渡にかかる譲渡所得の金額から3.000万円を特別控除できる。
【平成21年及び22年に取得した土地を売ったときの特例】
リーマンショック後の景気対策として創設された特例です。平成21年と22年に購入した土地などを売却した場合、その用途を問わず、売却利益から1.000万円を控除するという制度です。
【譲渡損失の特例】
5年を超えて保有する居住用財産を売却した際に、住宅ローンが残っており、かつ売却損がでた場合、この売却損を一定の限度でその年の他の所得から差し引くことができ、その年に差し引きしきれなかった金額については翌年以降3年間繰り越して控除できるという制度です。
取得費となるもの
- 売却した不動産の購入代金
- 購入時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 購入時に収めた税金(印紙税、登録免許税、不動産取得税)
- 司法書士に支払った登記手数料
- 購入時のリフォーム工事や増改築費用など
売却した不動産の購入代金は、土地と建物に分けて計算します。土地については購入額、建物については購入額から減価償却費を控除した価格を用います。
建物取得費の計算式
建物購入価格ー減価償却費相当額=建物取得費
減価償却費の計算式
建物購入価格✕0.9✕償却率✕経過年数=減価償却費
建物の構造別償却率と耐用年数
建物の構造 | 償却率(非事業用) | 耐用年数(非事業用) | 償却率(事業用) | 耐用年数(事業用) |
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 0.015 | 70 | 0.022 | 47 |
鉄骨造 骨格材の肉厚4mm超 | 0.020 | 51 | 0.020 | 19 |
鉄骨造 骨格材の肉厚3mm超4mm以下 | 0.025 | 40 | 0.030 | 34 |
鉄骨造 骨格材の肉厚3mm以下 | 0.036 | 28 | 0.053 | 19 |
木造 | 0.031 | 33 | 0.046 | 22 |
木骨モルタル造 | 0.034 | 30 | 0.050 | 20 |
譲渡費用となるもの
- 売却時に不動産会社に支払った仲介手数料
- 印紙代
- 測量費
- 建物取壊し費用
- 借家人に支払った立退料